も、この間の京都のようなことが又あると困るですから、芳子を私の家において、十分監督しようと思うんですがね」
「そう、それは好《い》いですよ。本当に芳子さんはああいうしっかり者だから、私みたいな無教育のものでは……」
「いや、そういう訳でも無いですがね。余り自由にさせ過ぎても、却《かえ》って当人の為にならんですから、一つ家に置いて、十分監督してみようと思うんです」
「それが好いですよ。本当に、芳子さんにもね……何処と悪いことのない、発明な、利口な、今の世には珍らしい方ですけれど、一つ悪いことがあってね、男の友達と平気で夜歩いたりなんかするんですからね。それさえ止すと好いんだけれどとよく言うのですの。すると芳子さんはまた小母さんの旧弊が始まったって、笑っているんだもの。いつかなぞも余り男と一緒に歩いたり何かするものだから、角《かど》の交番でね、不審にしてね、角袖《かくそで》巡査が家の前に立っていたことがあったと云いますよ。それはそんなことは無いんだから、構いはしませんけどもね……」
「それはいつのことです?」
「昨年の暮でしたかね」
「どうもハイカラ過ぎて困る」と時雄は言ったが、時計の針の
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