一兵卒
田山花袋
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)渠《かれ》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)支那|苦力《クーリー》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「※」は「需+頁」、第3水準1−94−6、142−7]
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渠《かれ》は歩き出した。
銃が重い、背嚢《はいのう》が重い、脚《あし》が重い、アルミニウム製の金椀《かなわん》が腰の剣に当たってカタカタと鳴る。その音が興奮した神経をおびただしく刺戟《しげき》するので、幾度かそれを直してみたが、どうしても鳴る、カタカタと鳴る。もう厭《いや》になってしまった。
病気はほんとうに治ったのでないから、息が非常に切れる。全身には悪熱悪寒が絶えず往来する。頭脳が火のように熱して、顳※[#「※」は「需+頁」、第3水準1−94−6、142−7]《こめかみ》がはげしい脈を打つ。なぜ、病院を出た? 軍医があとがたいせつだと言ってあれほど留めたのに、なぜ病院を出た? こう思ったが、渠はそれ
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