めくらじまや》の主人、苦しみを持つた女、恋にもだえた女、若いのも老いたのも皆なぞろ/\とかれの後について、合掌しながら歩いた。
始めの中は、町の警察の人達は、愚民を惑《まど》はすといふかど[#「かど」に傍点]で、頻《しき》りにそれを取締つたが、しかもこの不思議な信仰の「あらはれ」を何《ど》うすることも出来なかつた。ところどころで、巡査は剣を鳴してやつて来て、その群《むれ》に解散を命じた。一時は群集はあちこちに散つて行つても、瞬《またゝ》く間にまたあとからぞろ/\と続いた。店で仕事をしてゐた女が跣足《はだし》で飛び出して来てその群の中に雑《まじ》つた。
ある時は、寺の世話人達が町の警察署に呼ばれて行つた。
世話人は種々《いろ/\》なことを訊《き》かれた。しかしその不思議な僧の行為の中には、あやしいやうなことは少しもなかつた。すべて自然であつた。愚民を惑はすための行為らしい行為は何処にも発見することが出来なかつた。
世話人の一人は言つた。
「何うも、私達も困つてをりますのです。実は、寺の再興のために呼んで来たのですが、私達の申すことや、普通の僧侶のしなければならないことや、寺のこと
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