が照り、秋草が咲き、里川が静かに流れ、角のうどん屋では、かみさんがせっせとうどんを伸していた。
私は最初に、かれのつとめていた学校をたずねた。かれの宿直をした室、いっしょに教鞭《きょうべん》を取った人たち、校長、それからオルガンの前にもつれて行ってもらった。放課後で、校庭は静かに、やはり同じようにして、教師や生徒がボールなどをなげていた。
弥勒の村は、今では変わってにぎやかになったけれども、その時分はさびしいさびしい村だッた、その湯屋の煙突からは、静かに白い煙が立ち、用水|縁《べり》の小川屋の前の畠では、百姓の塵埃《じんあい》を燃している煙が斜めになびいていた。
私とO君とは、その小川屋で、さい[#「さい」に傍点]の煮つけで酒を飲んだ。
学校の校長が、私が話を聞きに行ったのを探偵にでも来たのかと思って、非常に恐れていたのも滑稽《こっけい》であった。
それから私は一度小林君の親たちの住んでいる家を訪ねた。やはり、小林君のことを小説にするとは言えないので、書画の話を聞くふりして出かけた。私はやさしい母親とのんきな父親とを見た。その家はじつに小林君の死の床の横たわったところであった
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