風
竹久夢二
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)若い梢《こずえ》も
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)生徒|達《たち》が
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風が、山の方から吹いて来ました。学校の先生がお通りになると、街で遊んでいた生徒|達《たち》が、みんなお辞儀をするように、風が通ると、林に立っている若い梢《こずえ》も、野の草も、みんなお辞儀をするのでした。
風は、街の方へも吹いて来ました。それはたいそう面白そうでした。教会の十字塔を吹いたり、煙突の口で鳴ったり、街の角を廻《まわ》るとき蜻蛉《とんぼ》返りをしたりする様子は、とても面白そうで、恰度《ちょうど》子供達が「鬼ごっこするもん寄っといで」と言うように、「ダンスをするもん寄っといで」といいながら、風の遊仲間《あそびなかま》を集めるのでした。
風が面白そうな歌をうたいながら、ダンスをして躍廻《おどりまわ》るので、干物台のエプロンや、子供の着物もダンスをはじめます。すると木の葉も、枝の端で踊りだす。街に落ちていた煙草《たばこ》の吸殻も、紙屑《かみくず》も空に舞上《まいあが》って踊るのでした。
その時、街を
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