博多人形
竹久夢二

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)お磯《いそ》は

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 お磯《いそ》は、可愛《かあ》い博多人形を持っていました。その人形は、黒い眼《め》と薔薇色《ばらいろ》の頬《ほお》を持った、それはそれは可愛《かあい》らしい人形でありましたから、お磯はどの人形よりも可愛がっていました。どこへゆく時にも傍《そば》をはなしませんでした。夜寝る時でさえ、そっと傍へ寝かしてやるほどでした。
 ある日お磯は、牧場へ茅花《つばな》を摘みにゆきました。やはりいつものように右の手には御気に入りの人形が抱っこされていました。
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……つうばな つうばな
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一枝折っては帯にさし
二枝折っては髪にさし……
[#ここで字下げ終わり]
 茅花が、両手に一ぱいになったとき、お磯は人形に言うのでした。
「あなたは好《い》い児《こ》ね。あたしは、お手手が、こんなに一ぱいなんでしょう。ほうら、だからここへねんねして待ってて頂戴《ちょうだい》な。かあさんす
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