ぐ来ますからね。いいこと」
 お磯《いそ》は、人形を草の上に寝かしました。柔かい青い草は、ほんとに気持のよい寝床でした。
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……三枝がさきに日が暮れて
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かみの庄屋《しょうや》が泊ろうか
なかの庄屋で宿とろか
しもの庄屋へ泊ったら……
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 お磯は、そう歌いながら茅花《つばな》を摘んでいるうちに、いつか太陽がおちて、そのあたりが薄暗くなって来ました。お磯はびっくりして人形を寝かしておいた所へ来ましたが、どこもかも草だらけで、どこへ人形をおいたやら、探しても見つかりません。
「あたしの坊やどこにいる?」
 いくら呼んでも返事がありません。そのうちに太陽は、ずんずん、お山の向うへ帰ってしまいました。
「まあここにいたの、磯ちゃん、さ帰りましょう」お家《うち》から姉さんが、呼びにきたのでした。
「だって、あたしのお人形が見えないんですもの」
 お磯はそう言って、姉さんと一緒に探しましたけれど、矢張人形は見つかりませんでした。
「あしたまた姉さんと探しにきましょうね。そしたらお日さまが手伝って探して下さるわ。ね」
 姉さんにそう
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