こへ連れていって頂戴《ちょうだい》な」
とたのみました。
「おや、お人形さん。あなたおいてけぼりになったの。でも、あたしお嬢さんのお家《うち》を知りませんよ、リイリイリイ」と言ってどこかへ飛んで行きました。
[#ここから2字下げ]
……クララ クララ……
[#ここで字下げ終わり]
川の淵《ふち》で蛙《かえる》がなきました。人形は、また蛙を呼びかけました。
「蛙さん、まだ夜はあけないの」
「おいらは知らないね。お日様が出たらきいて見な。クララクララ」蛙は、つっけんどんにそう言って、ずぼんと川の中へ飛込みました。
人形は泣きながら、さみしい夜の明けるのを待っていました。
やっと夜が明けて、近くでチョキンチョキンと鋏《はさみ》の音がしました。それは牧場の番人が草を刈りに来たのでした。
「おじさん、あたしのお人形を見なかって?」
そう言っているのは、お嬢さんの声だと、人形はおもいました。
「さあ、わしはまだ見ないが」
番人はそう言ってだんだん人形の近くまで刈ってきました。
「はやく刈って頂戴ね。おじさん」
お嬢さんも、人形も気が気ではありません。そのうちに、昨夜《ゆうべ》人形を隠
前へ
次へ
全5ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
竹久 夢二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング