都の眼
竹久夢二
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)留吉《とめきち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)昔|馴染《なじみ》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)帽子は[#「は」に「ママ」の注記]
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留吉《とめきち》は稲田の畦《あぜ》に腰かけて遠い山を見ていました。いつも留吉の考えることでありましたが、あの山の向うに、留吉が長いこと行って見たいと思っている都があるのでした。
そこには天子様のお城があって、町はいつもお祭りのように賑《にぎや》かで、町の人達は綺麗《きれい》な服をきたり、うまいものを食べて、みんな結構な暮《くらし》をしているのだ。欲しいものは何でも得られるし、見たいものはどんな面白いものでも、いつでも見ることが出来るし、どこへゆくにも電車や自動車があって、ちょっと手を挙げると思うところへゆけるのだ。
おなじ人間に生れながら、こんな田舎《いなか》で、朝から晩まで山ばかり見て暮すのはつまらない。いくら働いても働いても、親の代から子の代まで、いやおそらくいつまでたっても、もっと生活がよくなること
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