先生の顔
竹久夢二

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)葉子《ようこ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)毎日|側《そば》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
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   1

 それは火曜日の地理の時間でした。
 森先生は教壇の上から、葉子《ようこ》が附図《ふず》の蔭《かげ》にかくれて、ノートへ戯書《いたずらがき》をしているのを見つけた。
「葉子さん、そのノートを持ってここへお出《い》でなさい」不意に森先生が仰有《おっしゃ》ったので、葉子はびっくりした。
 葉子は日頃《ひごろ》から成績の悪い生徒ではありませんでした。けれど鉛筆と紙さえ持つと、何時《いつ》でも――授業の時間でさえも絵を画《か》きたがる癖がありました。今も地理の時間に、森先生の顔をそっと写生していたのでした。そして葉子は森先生を大変好きでした。
 森先生に呼ばれて、葉子《ようこ》はそのノートを先生の前へ出した。先生はすこし厳《こわ》い
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