フランネルのマスクを被《かぶ》る。
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    第一景

 幕があくと、舞台裏から左《さ》の唱歌が、だんだん近づき、舞台下手から少年少女が歌いながら登場。
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さくら  さくら
やよいの そらは
みわたす かぎり
かすみか くもか
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 少年少女が登場すると、舞台裏でもその唱歌を少し遅らせて、山彦《やまびこ》の心持で歌う。
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少女「おや! 兄さん、誰《だれ》か山の向うでも歌っていてよ」
少年「うそだよ、きっと夏《なっ》ちゃんの空耳だろう」
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少年歌いつづける。少女耳をすます。
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においぞ  いずる
いざや  いざや
みに   ゆかん
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少女「いいえ兄さん、よく聞いて御覧なさい……ほらね」
少年「ああ、ほんとだ、誰《だれ》だろう」
少女「ね、兄さんもっと何か言って御覧なさい」
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さくら   さくら
やよいの  そらは
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少年歌いながら
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