花《はな》の都《みやこ》も近《ちか》くなるらん
「お鶴《つる》は死《しな》ないんですねえ、母様《かあさま》」
「さいなあ、阿波《あは》の鳴門《なると》をこえて観音様《くわんのんさま》のお膝許《ひざもと》へいきやつたといのう」
「でも、お鶴《つる》はお祖母様《ばあさん》の手紙《てがみ》を母様《かあさま》にみせたの」
「さいなあ、お鶴《つる》の母御《はヽご》は、その手紙《てがみ》をお鶴《つる》の懐《ふところ》からとりだして読《よ》みながらよみながらお泣《なき》やつたといのう」
「母様《かあさま》、お鶴《つる》は死《し》んだの」
「なんの、死《し》ぬものぞいの。お鶴《つる》は観音様《くわんのんさま》のお膝許《ひざもと》へいつたのやがな」
「母様《かあさま》、お鶴《つる》はなんて言《い》つて歌《うた》つたの」
賽《さい》の河原《かはら》で砂手本《すなてほん》
一ツつんでは母《はヽ》のため
二ツつんでは父《ちヽ》のため
三千世界《さんぜんせかい》の親《おや》と子《こ》が
死出《しで》の旅路《たびぢ》をふだらくや
あすの夜《よ》たれか添乳《そへぢ》せん
「か…
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