旅籠《はたご》や三輪《みわ》の茶屋《ちやや》…………
      五|日《か》、三|日《か》夜《よ》をあかし…………
と指《ゆび》おりかぞえ
  …………二十日《はつか》あまりに四十|両《りやう》、つかひはたし
      て二|歩《ぶ》のこる、金《かね》ゆへ大事《だいじ》の忠兵衛《ちゆうべえ》さ
      ん…………
といつて、傍《かたは》らに首《くび》をたれた忠兵衛《ちゆうべえ》をみやつたガラスの眼《め》には泪《なみだ》があるのかとおもはれました。
  …………科人《とがにん》にしたもわたしから、さぞにくかろう
      お腹《はら》もたとう…………
思《おも》ひせまつて梅川《うめかは》は、袖《たもと》をだいてよろ/\よろ、私《わたし》の方《はう》へよろめいて、はつと踏《ふ》みとまつて、手《て》をあげた時《とき》、白《しろ》い指《ゆび》がかちりと鳴《な》つたのです。
私《わたし》は泣《な》きながら奥《おく》へはしりこみました。
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     阿波鳴門順礼歌《あはのなるとじゅんれいうた》



   ふる里《さと》をはる/″\
   こヽに紀三井寺《きみいでら》
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