《む》 阿《あ》 弥《み》 陀《だ》 仏《ぶつ》」
きらりと光《ひか》る金属《きんぞく》のもとに、黒髪《くろかみ》うつくしい襟足《えりあし》ががっくりとまへにうちのめつた。血汐《ちしほ》のしたヽる生首《なまくび》をひっさげた山賊《さんぞく》は、黒《くろ》い口《くち》をゆがめてから/\からと打笑《うちわら》つた。
あヽお姫様《ひいさま》は斬《き》られたのか。
それは少年《せうねん》のためには「死《し》の最初《さいしよ》の発見《はつけん》」であつた。
もう姫君《ひめぎみ》は死《し》んだのだ、死《し》んでしまへば、もうこの世《よ》で花《はな》も、鳥《とり》も、歌《うた》も、再《ふたヽ》びきくこともみることもできないのだ。
涙《なみだ》は少年《せうねん》の胸《むね》をこみあげこみあげ頬《ほ》をながれた。
「死顔《しにがほ》」も「黒《くろ》き笑《わらひ》も」泪《なみだ》にとけて、カンテラの光《ひかり》のなかへぎらぎらときえていつた、舞台《ぶたい》も桟敷《さじき》も金色《こんじき》の波《なみ》のなかにたヾよふた。
その時《とき》、黒装束《くろせうぞく》に覆面《ふくめん》した怪物《くわいぶつ》が澤村
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