早く雪が降ってくれるといいな。そしてクリスマスの晩になるといいな。だけど、ジャッキイはどうしたろう。あれからすっかり幸福《しあわせ》になったかしら。まだあの大きなズボンをはいて、ロンドンの街を歩いているのじゃないかしら。ぼくもロンドンへゆきたいな。お姉さんが死んでしまったら、ぼくお姉様のヴァイオリンを貰《もら》おうや。そして、クリスマスの晩、ロンドンの街を歩くんだ。そうすると大きな、玩具屋《おもちゃや》があって、そこの飾窓《ショウウィンドウ》に、テッディ熊《ベア》がいるだろう。「おい危《あぶな》い」で、空には星が、きらきら光っていて、袋を持たないサンタクロスのお爺《じい》さんがやってくる。ジャッキイがヴァイオリンをひいているのを、お爺さんがききながら、「うまい、うまい。ジャッキイは、今に大音楽家になるぞ」そう言ってほめました。
きっと、ぼくは大音楽家になるだろう。そして、ぼくのお父様《とうさん》も大音楽家なんだ。おや、おや。ぼくのお父様は、会社へ出ているんだっけ、
「カン、カン、カン」
「カン、カン、カン」
その時、春太郎は、いつの間にか、学校の前へ来ていました。
いま恰度《ちょ
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