ねばなりませんでした。
お爺さんは、親切ないい人でしたが、ある日ジャッキイの子守唄《こもりうた》をききながら、死んでしまいました。ジャッキイは、またある有名な音楽家に救われて、そこの家《うち》へ引取られてゆきました。食堂へはいると、そこに写真がかかっていました。それは一人の女の肖像でありました。ジャッキイはそれを見て
「ああ、お母様《かあさん》だ!」
その音楽家もびっくりしてしまいました。ジャッキイは、ポケットから、一枚の写真を出して、その音楽家に見せました。写真のうらには
[#天から3字下げ]ジャッキイへ、お前の母より
と書いてあるのでした。その写真と、この額の写真とは、おなじ人でありました。
「お前はわたしの子だったのか」
音楽家は、ジャッキイをしっかり抱きしめて、ジャッキイの眼《め》からながれる嬉《うれ》し涙を、ふいてやりました。
お父さんの音楽家の眼からも、玉のような涙がぽろぽろと流れました。春太郎《はるたろう》の眼からも、ぽろぽろと大きなのがころげました。春太郎のお姉様《ねえさん》も眼にハンケチをあてていました。
春太郎《はるたろう》は、学校へゆく道で考えました。
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