ないのです。玩具の汽缶車は、もう一生懸命です。どうかしてはやく花子さんのところへ薪炭をおくりたいという一心です。
「なんださか、こんなさか」
「汽缶車さん、気の毒だね、おもたくて」
「なあに、もすこしですよ。なんださか、こんなさか」
それでもやっとこさ、峠のうえまで、ちいさな汽缶車が大きな薪炭を引きあげました。
「やれ、やれ、骨がおれましたね」
「これからはらくですよ、下坂《くだりざか》ですからね」
こんどはもうまるでらくらくと走ってゆきました。そしてすぐに花子さんの所へつきました。
「さあ、花子さん来ましたよ」
「はやく来られたわね」
そこで、花子さんも、おばあさんも、冬の用意が出来ました。
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館
2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行
底本の親本:「童話 春」研究社
1926(大正15)年12月
入力:noir
校正:noriko saito
2006年7月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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