に思《おも》つて撃《うた》ないでつれてかへつて可愛《かあい》がつて飼《かつ》てやりました。
するとその辺《へん》に住《す》んでゐた太郎《たらう》ぢやない、次郎《じらう》といふ子供《こども》が、その鸚鵡《あうむ》を盗《ぬす》んでポツケツトへ入《い》れました。
猟人《かりうど》[#ルビの「かりうど」は底本では「りうど」]は鸚鵡《あうむ》がゐないので「おまへはどこへいつた」と言《い》ひますと、鸚鵡《あうむ》は子供《こども》のポツケツトの中《なか》で「わたしはこ※[#二の字点、1−2−22]にゐる」と答《こた》へました。
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しか

鹿《しか》が小川《をがは》の水《みづ》の中《なか》に立《た》つて、自分《じぶん》の姿《すがた》を水《みづ》に映《うつ》して
「おれの角《つの》はなんて美《うつく》しいんだらう。だが、この足《あし》の細《ほそ》いことはどうだろう、もすこし太《ふと》かつたらなア」と独語《ひとりごと》を言《いつ》た。そこへ猟人《かりうど》が来《き》た。おどろいて鹿《しか》は迯《に》げだした。細《ほそ》い足《あし》のおかげで走《はし》るわ、走《はし》るわ、よつぽど遠《とほ》くまで迯《に》げのびたが、藪《やぶ》のかげでその美《うつ》くしい角《つの》めが笹《さヽ》に引掛《ひつか》かつてとう/\猟人《かりうど》につかまつたとさ。
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ライオン

太郎《たらう》は、エソップのなかの、或時《あるとき》ライオンが一疋《いつぴき》の鼠《ねづみ》を捕《と》つたら、鼠《ねづみ》が「おぢさんわたいのやうな小《ち》いさなものをいぢめたつてあなたの手柄《てがら》にもなりますまい」つて言《い》つたらライオンは「ハヽヽヽなるほどさうだ」つて許《ゆる》してやつた。するとある時《とき》、ライオンが猟人《かりうど》に捕《つかま》つて縛《しば》られたとこへ例《れい》の鼠《ねづみ》が来《き》て「おぢさん、待《ま》つといで」と言《い》つて縛《しば》つた縄《なわ》を噛切《かみき》つてやりました。つていふ噺《はなし》を思出《おもひだ》して「おぢさん、ライオンは馴《なれ》たら鼠《ねづみ》でも喰《く》ひませんか」と動物園《どうぶつゑん》のおぢさんに聞《き》きました。すると、おぢさんの答《こたへ》はこうでした「すぐ喰《く》つちまふ」
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だてう

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太郎「だてふはいつも立《た》つてばかりゐますが、夜《よる》ねる時《とき》でも立《たつ》てますか」
動物園のおぢさん「夜《よる》はやつぱりしやがんで眠《ねむ》ります」
太郎「象《ざう》は立《た》つて眠《ね》るんでせう」
おぢさん「い※[#二の字点、1−2−22]へ象《ざう》もすわつて寝《ね》ます」
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かば

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太郎「おぢさん河馬《かば》は汚《きたな》いね※[#「江」のくずし字、コマ23−右−1]」
おぢさん「なぜさ」
太郎「だつて皮《かは》の穴《あな》からなんだか赤《あか》い汁《しる》が出《で》るんだもの」
おぢさん「でもあの汁《しる》がすきな鳥《とり》があるとさ。その鳥《とり》が来《く》ると河馬《かば》はじつとして、あの毛穴《けあな》の中《なか》の黴菌《ばいきん》を鳥《とり》がとつてくれるのをまつてゐるんだつてさ。それがその鳥《とり》の食物《しよくもつ》なのさ」
太郎「汚《きたな》い鳥《とり》だなあ、なんていふ名《な》」
おぢさん「知《し》らない」
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キバタン

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太郎「おまへは何処《どこ》から来《き》たの」
キバタン「印度《いんど》から来《き》ました」
太郎「印度《いんど》は黒坊《くろんぼ》ばかりゐるのかと思《おも》つたら、おまへのやうな白《しろ》い鳥《とり》もゐるのかい」
キバタン「なあに、昔《むかし》は黒《くろ》かつたんですが、あんまり太陽《たいやう》の光《ひかり》がきついもんですからはげてしまつたんです」
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とら

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動物園のおぢさん「ある時《とき》、白《しろ》い夏服《なつふく》を着《き》た巡査《じゆんさ》が、剣《けん》か何《なん》かでこの虎《とら》をおどかしたことがありました。それからといふもの白《しろ》い服《ふく》を着《き》た巡査《じゆんさ》が来《く》ると怒《おこ》ります」
太郎「おぢさん、虎《とら》はよく覚《おぼ》えてゐますね」
おぢさん「一度《いちど》そんなことがあると決《けつ》して忘《わす》れません」
太郎「虎《とら》が客《きやく》に向《むか》つて放尿《ほうねう》してもおまはり
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