「おぢさん狐《きつね》は化《ばか》しませんか」
動物園のおぢさん「私《わたし》はまだ化《ばか》された事《こと》はない」
太郎「おぢさん、この狐《きつね》は雄《をす》と雌《めす》ですか」
おぢさん「さうです」
太郎「それぢや、狐《きつね》のお嫁入《よめいり》の時《とき》雨《あめ》が降《ふ》りましたか」
おぢさん「この狐《きつね》たちは動物園《どうぶつゑん》へ来《く》るまへにもう嫁《よめ》いりしたのです」
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ぞう

何時《いつ》来《き》て見《み》ても
泣《な》いてゐる。
何《なに》が悲《かな》しゆて
お泣《な》きやるぞ。
悲《かな》しいことはないけれど
生《うま》れ故郷《こけう》が
なつかしい。
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はと

………たべてもすぐにかへらずに
   ぽつぽぽつぽとないて遊《あそ》べ………

………いつしよに遊《あそ》ぼとおもへども
   下駄《げた》や足駄《あしだ》の坊《ぼつ》ちやんに
   足《あし》を踏《ふ》まれて痛《いた》いゆへ
   屋根《やね》のうへから見《み》てゐましよ………
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さる

一|疋《ぴき》の小猿《こざる》が「おれのお父様《とつちあん》はおまへ豪《えらい》んだぜ、兎《うさぎ》と喧嘩《けんくわ》をして勝《か》つたよ」と言《い》ひました。すると他《ほか》の小猿《こざる》が「おれの父様《ちやん》はもつと豪《えら》いや、鬼《おに》ヶ島《しま》を征伐《せいばつ》にいつたんだもの」「うそだあ、ありや昔《むかし》の事《こと》ぢやないか」「うそぢやありませんよだ。それが証拠《せうこ》にはお尻《しり》のとこに大《おほ》きな刀痕《かたなきづ》がついてらあ」と威張《ゐば》りました。
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にはとり

鶏《にはとり》は神様《かみさま》に夜明《よあけ》を知《し》らせる事《こと》を仰付《おほせつ》かつたのが嬉《うれ》しさに、最初《さいしよ》の夜《よる》、まだお月様《つきさま》がゆつくりと空《そら》を遊《あそ》びまはつてゐるのに、時《とき》を作《つく》つて啼《な》きました。それで朝日《あさひ》はびつくらして東《ひがし》の山《やま》から出《で》ましたので、お月様《つきさま》はなごり惜《を》しいけれどそれきり夜《よる》に別《わか》れました。それからといふもの、お月様《つきさま》は怒《おこ》つて日《ひ》が
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