たどんの與太さん
竹久夢二
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)與太郎《よたろう》なんて
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)電車|通《どおり》の方へ
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「なんだってお寺の坊さんは、ぼくに與太郎《よたろう》なんて名前をつけてくれたんだろう」
と、與太郎は考えました。
「飴《あめ》のなかから與太さんが出たよ」街の飴屋の爺《じい》さんが、そう節をつけて歌いながら大きなナイフで飴の棒を切ると、なかから、いくらでも與太郎の顔が出てくるのでありました。これには與太郎も困りました。
「よんべ、よこちょの、よたろうは」
そういって、八百屋の小僧まで、與太郎が、八百屋へ大根だの芋だのを買いにゆくと、からかいました。
「あの坊さんは、あれでエライお方なんだよ。あんなエライお方が、名づけ親なんだから、お前は、きっと今にエラクなりますよ」
與太郎のお母さんは、いつもそういいました。加藤清正《かとうきよまさ》は加藤清正らしい顔をしているし、ナポレオンはナポレオンらしい顔をしているから、與太郎《よたろう》の顔も與太郎らしいだろうか、與太郎は考えるのでした。
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