だけど、飴《あめ》のなかから出てくる顔は、どうもよくないや。だけど飴のなかから大そうエライ人が生まれるのかも知れない。キリスト様は、馬小屋のなかからお生れなすったし、ナスカヤ姫は、紅茸《べにだけ》から出て来たからな。與太郎は考えるのでした。
「マリヤとグレコは、山へ茸狩にゆきました」
與太郎は妹のお才《さい》に、デンマルクのお伽噺《とぎばなし》をよんできかせました。
「マリヤとグレコは、だんだん山の奥の方へはいってゆきました。するとそれはそれは綺麗《きれい》な紅茸がどっさり生えていました。――綺麗だなあ。グレコが言いました。――いけませんよ、それは毒茸ですから。マリヤが言いました。――だって綺麗だから好《い》いよ。――いくら綺麗でも毒なものはいけません。これはとると死んでしまいますよ。マリヤが何と言っても、グレコは紅茸をとりました。
――わたしはデンマルクの第二王女です。わたしは姉の女王のために、この山奥へ流されたのです。可愛《かあ》いい親切な坊っちゃん、あたしの王様になって下さいね。紅茸の王女は、そう言ってグレコの手をとって、森の御殿へつれてゆきました。
與太郎は、あの話を思出
前へ
次へ
全6ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
竹久 夢二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング