の八をその上へ重ねて置いた。
「いつたい何で殺さうつてんだ、この古狸め?」
 妖女《ウェーヂマ》は自分の置いた牌《ふだ》を取りあげた。と、その下にあるのは普通牌《なみふだ》の六だつた。
「ちえつ、悪魔め、誤魔化しやあがつて!」さう言つて祖父は腹立ちまぎれに、拳を振りあげて、力まかせに卓子をたたきつけた。だが、まだしも仕合はせなことには、妖女《ウェーヂマ》の手が余り香ばしくなくて、祖父の手に今度はお誂へむきな揃札《くつつき》が出来た。そこで堆牌《やま》から札をめくりにかかつたが、いやもう我慢も出来ないやうな、碌でもないものばかり起きてくるので、祖父はがつかりしてしまつた。ところが堆牌《やま》がすつかりになつてしまつた。彼は、もうかうなれば破れかぶれだとばかりに、六の普通牌《なみふだ》を打つた。と、妖女《ウェーヂマ》がそれを受け取つた。
「おやおや! これあ又、いつたいどうしたといふのぢや? うへつ! なんだかこれあ、少しをかしいぞ!」
 そこで祖父は自分の牌《ふだ》をそつと卓子の下へ匿して十字を切つた。と、どうだらう、持牌《もちふだ》は切札の|A牌《ポイント》に王牌《キング》に兵牌《ジャ
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