くつつき》ひとつないのに、妖女《ウェーヂマ》の方では後からあとから二二一《ピャチェリク》ばかり揃へやがる。たうとう負けになつてしまつた! 祖父が負けといふことにきまると同時に、四方八方から馬のやうな、犬のやうな、豚のやうな、さまざまな鳴き声で妖怪どもが※[#始め二重括弧、1−2−54]阿房《ドゥーレン》、阿房《ドゥーレン》、阿房《ドゥーレン》!※[#終わり二重括弧、1−2−55]とほざき立てた。
「ええつ、汝《うぬ》たち悪魔のみうちめ、とつとと消え失せやがればいいに!」指をあてて耳に蓋をしながら、祖父が呶鳴つた。そして心の中で※[#始め二重括弧、1−2−54]さては妖女《ウェーヂマ》め、いかさまをしをつたな、ぢやあ今度はひとつ俺が配つてやらう※[#終わり二重括弧、1−2−55]と考へた。そこで彼は牌を配つて、切札を宣告した。自分の牌を見ると、素晴らしい手で、切札もある。最初のうちはこのうへもない上々の首尾で勝負が進んだ。ところが妖女《ウェーヂマ》め、又もや王牌《キング》入の二二一《ピャチェリク》をならべをつた! 祖父の手は切札ぞろひと来てゐる! 碌々思案もせずに、祖父は王牌《キング》の
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