、1−2−54]阿房《ドゥールニャ》※[#終わり二重括弧、1−2−55]の手合せをしてからでなきや駄目だよ。」
 さてなんとしたものだらう? 哥薩克ともある者が女《あま》つこどもの仲間へ入つて※[#始め二重括弧、1−2−54]阿房《ドゥールニャ》※[#終わり二重括弧、1−2−55]をやるなんて! 祖父は飽くまで潔よしとしなかつたけれど、たうとうしまひに勝負をすることにきめた。そこで骨牌《トランプ》が持ち出されたが、それは、祭司の娘が未来の花聟を占ふ時ぐらゐにしか用ゐないやうな、手垢だらけの薄ぎたない札だつた。
「さあ、よろしいかね!」と、例の妖女《ウェーヂマ》が再び吠えるやうに言つた。「もしお前さんが一度でも勝負に勝てば、帽子はお前さんに返してあげるけれど、三度ともつづけて負けたら、お気の毒だが帽子だけではなしに、お前さんの命もいつしよに、こちらへ貰ひますよ!」
「札を配りやあがれ、耄碌婆あめ! なんとでも、なるやうになるのぢや。」
 そこで骨牌が配られた。祖父は自分の札を手に取つたが――まつたく見るのも厭な、悪い手だ。まるで切札なんか一枚もなく、やつと並札《なみ》の十が上々で、揃札《
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