始め二重括弧、1−2−54]うん、これあまんざらでもないぞ。※[#終わり二重括弧、1−2−55]祖父は、食卓のうへに並べられた豚肉や腸詰や、それから玉菜《キャベツ》と一緒に微塵切りにした玉葱や、その他さまざまの美味《うま》さうな御馳走を見ると、心ひそかに呟やいた。※[#始め二重括弧、1−2−54]なるほど、魔性の悪党どもが精進を守るわけはあるまいて。※[#終わり二重括弧、1−2−55]ところで御承知おき願はねばならぬことは、この祖父といふのがまた、至つて健啖家で、何かにのきらひなく、むしやむしや頬張る機会を逃す人ではなかつたことぢや。頗るつきの喰らひ抜けと来てゐたので、碌々はなしにも身を入れず、刻んだ豚脂《ベーコン》の入つた鉢と燻豚《ハム》とを引き寄せると、百姓が乾草を掻きよせる熊手とあまり大きさの違はないやうな肉叉《フォーク》をとりあげて、それでもつて一番重たさうな一と片《きれ》を突き刺した。それに麺麭を一※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]り取りそへて、やをら、口へ持つていつたつもりだつたが、はて面妖な、それは自分の直ぐ脇にゐた奴の口へ入つてゐた。そしてすぐ耳もとで、どい
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