女《ウェーヂマ》が残らず、酔つぱらつたやうな恰好で、珍妙な悪魔の踊りををどつてゐるのだ。その又、おつそろしく埃りを立てをることと言つたら! 一と目、その悪魔の身内どもが空高く宙を翔ける有様を見たならば、洗礼を受けた基督教徒は思はず顫へあがつたことだらう。また、犬のやうな鼻面の悪魔どもが、独逸人そつくりの細い脚で立つて、尻尾をくるくる振りまはしながら、ちやうど、若い衆が美しい娘にするやうに、妖女《ウェーヂマ》たちをとりまいてじやらついたり、楽師どもが太鼓を打つやうに、われとわが頬を打ち、角笛を吹くやうに鼻を鳴らしなどするのを見ては、すべてのおそろしさも打ち忘れてプッと噴飯《ふきだ》さずにはゐられなかつた。祖父の姿を見つけると、そいつらが犇々とこちらへ押しよせて来るのだ。豚のやうな、犬のやうな、山羊のやうな、鴇《のがん》のやうな、馬のやうな、様々の鼻面が、いちどきにぬつと頸をのばして、祖父の顔をペロペロと舐めまはしたものだ。その穢ならしさに祖父はペッと唾を吐いた。だが結局、彼は一同につかまへられて、長さがコノトープからバトゥーリンまでの道程ほどもある大食卓にむかつて席につかせられた。※[#
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