を額ごしに投げた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]そうら、また親爺め、女帝陛下のお供をした時の話をはじめをるぞ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]かう、呟やきながらレヴコーは足ばやに、例の長《たけ》の低い桜樹《さくら》にかこまれた、馴染の小家をめざして、心も漫ろに急いでゐた。※[#始め二重括弧、1−2−54]気立が優しくて、姿の美しい令嬢《パンノチカ》、どうかあんたに天国のお恵みがありますやうに!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、彼は心のなかで祈つた。※[#始め二重括弧、1−2−54]あんたが永久に聖い天使たちのあひだで笑つて暮すことができますやうに! 今夜の不思議な出来事は誰にも話すまい。ただハーリャ、お前だけには話してやらう。お前だけはおれの話を信じて、おれといつしよに、あの薄倖《ふしあはせ》な水死女の魂の安息のために祈るだらうから!※[#終わり二重括弧、1−2−55]やがて彼はくだんの小家へ近よつた。窓は開かれてゐた。月光は窓ごしに、彼の面前ですやすやと眠つてゐるハンナの顔を照らしてゐた。彼女は腕枕をして眠つてゐた。頬の色がほんのりと赧らんでゐた。唇がうごいて微かに彼
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