刻|妻《めあ》はすべきこと、同時に、国道筋の橋梁を修復し、且つ本官の許可なくしては、たとへ県本金庫より直接出張の役人たりとも、村馬の提供無用のことを申し付く。万一本官到着までに右命令の実行之無き時は、その責一に貴下にありと断ずるものなり。代官、退職中尉コジマ・デルカッチ・ドゥリシュパノーフスキイ※[#終わり二重括弧、1−2−55]
「これはしたり!」と、村長は口あんぐりの体《てい》で言つた。「お聴きの通りぢや、すべて村長に責任ありとさ。さすれば服従せにやならんわい! 絶対に服従せにやならんわい! さもなければ遺憾ながら……。で、貴様にも」と、彼はレヴコーの方へ向きなほつて語をついだ。「代官からの命令とあれば是非もない――尤も、どうしてそんなことが代官の耳に入つたのか、すこし訝《をか》しいけれど――結婚をさせてやることにする。ただ、それに先だつて貴様は鞭の味を味ははにやならんぞ! うちの聖像の下の壁に懸かつてをるやつを知つとるぢやらう? 明日《あした》あれの手入れをしてと……。して貴様、この手紙は何処で受けとつたのぢや?」
 レヴコーはこの思ひもかけぬ局面の転換に茫然としてゐたが、それで
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