こしたのか、拝聴するとしようか!」と、煙管を啣へて火を燧ちながら、蒸溜人《こして》が言つた。
 助役は咳ばらひをしてから読みはじめた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]一つ、村長エヴトゥーフ・マコゴニェンコに対する命令のこと。本官の聞き及ぶところによれば老齢暗愚なる貴下は従来の滞納金を徴収もせず、村内の秩序に意を用ふることもなく、剰さへいよいよ逆上して醜陋の限りを尽し……※[#終わり二重括弧、1−2−55]
「はつて面妖な!」と、村長が遮ぎつた。「とんと良く聞えんが!」
 助役は改めて初めから読み直しにかかつた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]一つ、村長エヴトゥーフ・マコゴニェンコに対する命令のこと。本官の聞き及ぶところによれば、老齢暗愚なる……※[#終わり二重括弧、1−2−55]
「うんにや、よろしい! そこは肝腎なところぢやないて!」と、村長が喚き出した。「尤もよくは聞き取れなかつたけれど、まだ、そこは本題ぢやない。先きを読んで下され!」
※[#始め二重括弧、1−2−54]扠、つぎに本官は貴下の子息レヴコー・マコゴニェンコに貴村の哥薩克娘ハンナ・ペトゥルイチェンコワなる者を即
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