汝《うぬ》の仕業なのぢやな、――生煮えの葛湯《キッセリ》で汝《うぬ》の親爺が息をつめて斃《くたば》つてしまやあええ!――往来で乱暴を働らいたり、碌でもない歌を作つて唄つたりしをつて……。えいえい、レヴコー汝《おの》れはな! なんちふこつた? おほかた、どしやう骨を叩き折つて貰ひたいのぢやらう! こいつをふん縛れ!」
「待つておくれ、お父《とつ》つあん! この手紙をあづかつて来たんだよ。」と、レヴコーが言つた。
「ええい、今は手紙どころの騒ぎぢやないわい、この馬鹿者めが! さつさとこやつを縛つてしまへ!」
「お待ちなされ、村長さん!」と、その手紙を開きながら助役が言つた。「これあ、代官からの直筆ですぞ!」
「なに、代官からの?」
「代官からの?」と、村役人たちも機械的に繰りかへした。
※[#始め二重括弧、1−2−54]なに、代官からだつて? こいつは変だぞ! いよいよ分らなくなつたわい!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と心の中でレヴコーは考へた。
「読んでみて下され、読んでみて!」と村長が言つた。「何をいつたい、代官から言つてよこしたものか?」
「はあて、代官からいつたい何を言つてよ
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