に一と塊りになつて、踊つたり、人の袖を曳つぱつたり、舌を出したり、持ち物を引つたくつたりしやあがるんですよ……。へん、勝手にしやがれだ!……どうして野郎の代りにこんな鴉を掴まされたものか、とんと合点がゆかねえや!」
「このわしの権力と、全村民の権力をもつて命令するのぢや。」と、村長が言つた。「その盗賊めを即刻、逮捕しろ、また往来をうろつく奴らも残らず、詮議のためにわしのところへ拘引するのぢやぞ!……」
「どうか、はあ、村長さま!」と村役人のうちの二三が平身低頭しながら歎願した。「あなたがあいつらの顔を、ひと目でも御覧なされたらなあ、ほんとに生まれてこの方、洗礼を受けてこの方、あんな気味の悪い顔は見たことがありましねえだよ。今に飛んでもねえことになるめえものでもありませんよ、村長さま。あれを見ちやあ、女どもでなくつても一生おびえが癒らねえくらゐ、堅気な人々を嚇かしをりますんで。」
「それほど怯えたけれあ、このわしが、怯えさせて呉れようか! 貴様たちやあ、どうしたつちふのぢや? 命令に従はんちふのか? 貴様たちやあ、奴等の味方をするつてえのか? 謀叛人になつたちふのか? どうしたちふんだ?
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