の上段の席みてえに、きれいさつぱりと片づいて何ひとつ残つちやあゐねえんでさ。姑《おふくろ》はそこで、また新たにつぎ足しましただが、今度はお客さんも鱈腹つめこんだことだから、たんとは食ふまいと思つてゐるとね、どうしてどうして、いよいよ盛んに貪るやうに、又ぞろそれもぺろりと空にしてしまつたでがすよ。腹の空《す》いてゐた姑《おふくろ》は心のなかで、※[#始め二重括弧、1−2−54]ほんとに、その団子が咽喉につまつて、おつ死んでしまへば好いのに!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と思つただね。するとどうでがせう。不意にその男が咽喉をつまらしてぶつ倒れてしまつただ。みんなが駈けよつて見ると、もう息はなかつたといひますだよ。窒息つてえ奴でさあね。」
「そんな業突張《ごふつくばり》な喰らひ抜け野郎にやあ、さうならねえのが間違つてまさあ!」と、村長が言つた。
「いんにや、さうぢやありましねえだよ。だつて、その時以来、姑《おふくろ》はどうにもそれが気になつて気になつてなんねえでがしてな。それに日が暮れると死人が迷つて来るつてんでがすよ。そやつが煙突のてつぺんに腰かけて、団子をくはへてるつてんでがすよ。
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