[#始め二重括弧、1−2−54]もう商売《あきなひ》もあがつたりだんべえ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]かうひとりごとを言ひながら、彼は牝馬の手綱をほどいて広場へ曳きだした。※[#始め二重括弧、1−2−54]ほんに、さういへば、この忌々しい定期市《ヤールマルカ》へ出かける時だつて、何だか牛の死骸でも背負はされたやうな重つ苦しい気持がしただて。それに去勢牛《きんぬき》どもめが二度ばかり家の方へ後もどりをしかけやがつた。それから、どうも今になつて考げえて見ると、おいらは月曜日に家を出たやうだぞ。なるほど、それがそもそもよくなかつただ!……忌々しい、性懲りもねえ悪魔の野郎めが、片つぽうくれえ袖口がなくつたつてよかりさうなもんだに、しやうもねえ、なんの罪科《つみとが》もない人間を騒がせやあがるだ。仮りにおいらがその悪魔だとしたら――あつ、鶴亀々々!――そんな碌でもない襤褸つきれなんぞ探しに、よる夜なかうろつきまはるなんて馬鹿な真似をするかしらんて?※[#終わり二重括弧、1−2−55]
この時、われらのチェレ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ークの推理の糸は突然、ふとい頓狂な声のため
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