ークが口をはさんだ。
「なんでもねえだよ!……」さう答へながら、教父《クーム》はからだぢゆうをガタガタ顫はせてゐる。
「ええつ!」客の一人がさう口走つた。
「お前さんがいつただんべ?」
「いんにや!」
「いつたい誰が鼻を鳴らしただ?……」
「馬鹿々々しいつたら、何をおれたちやあ大騒ぎしてるだ! ビクつくこたあ、なんにもありやしねえやな!」
それでも、一同はびくびくして、あたりを見まはしたり、部屋の隅々へ眼をくばつたりしはじめた。ヒーヴリャはまるで生きた心地もなかつた。「まあ、ほんとにお前さんたちは女《あま》つ子《こ》だよ、まるで女つ子だよ!」と、彼女は大声をあげて喚いた。「お前さんたちが男一匹で、哥薩克の働らきが出来ようなんて、とても思ひもよらないよ! お前さんたちにやあ、紡錘《つむ》を持つて糸車のまへに坐るくらゐが分相応だよ! あれあ屹度、何だよ、誰かがお屁《なら》をしたのか……それとも誰かのお尻の下で腰掛が鳴つただけのことさ。それだのに、みんな狂人《きちがひ》みたいに跳びあがるなんて!」
この言葉にわれらの勇士たちは気恥かしくなつて、強ひて空元気をつけた。そこで教父は水筒から一
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