キ》を引きよせた。「しかし、ハヴローニヤ・ニキーフォロヴナ、わたしの胸はどんなパムプーシェチキやガルーシュキにも増してもつともつとおいしい御馳走が頂きたくつてギュウギュウいつてるのですよ。」
「さあ、このほかにどんな食べものがお望みなのか、あたしにはちよつと分りかねますわ、アファナーシイ・イワーノ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ!」この肥つちよの別嬪は、いかにも腑に落ちないといつた容子《ふり》をして、さう答へた。
「あなたの愛情《おなさけ》にきまつてるぢやありませんか、ハヴローニヤ・ニキーフォロヴナ!」かう囁やくやうに言ふと、祭司の息子は片手に肉入団子《ワレーニキ》を持つたまま、片手でがつしりした女のからだを抱きよせた。
「まあ、思ひがけない、何を仰つしやることやら、アファナーシイ・イワーノ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ!」さう面映げにヒーヴリャは眼を伏せて答へた。「ひよつとしたら、まだそのうへに接吻をなさるつもりなんでしよ!」
「それについて、これは自分自身のことですけれど思ひきつて白状しますがね、」と、祭司の息子が言葉をついだ。「あれはたしか、まだ神学校の寄宿
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