と美しい言ひ現はし方をしようと思つたからかも知れない。
「ようく、乾草を振り捌くのだぞ!」と、グリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは自分の従僕に対つて言つた。「この辺の乾草は実にひどいから、ひよつとすると、小枝などが混つてゐるかもしれんぞ。ぢやあ、あなた、お寝みなさいまし! 明朝はもうお目にかかれますまい。私は夜明け前に出発いたしますからね。明日は土曜のことで、あなたの猶太人は安息日を守りませうから何も早くお起きになることはありませんよ。どうか私のお願ひをお忘れにならないで下さい。ホルトゥイシチェへお出かけ下さらないと、ほんとに承知いたしませんよ。」
 そこでグリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチの従僕が、主人のフロックコートと長靴を脱がせて寝衣に著かへさせた。するとグリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは、いきなり寝床の上へごろりと横になつたが、それは、まるで厖大な羽根蒲団がもう一つの羽根蒲団の上へ重なつたやうな恰好であつた。
「えい、小僧つ! どこへ行くんだ、悪党! ここへ来て、掛蒲団を直す
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