めき、樫の幹が破け、稲妻が雲間に乱れて一時に全世界を照らす時、ドニェープルは世にも凄まじい光景を呈する! 丘のやうな波濤が轟々と鳴つて山裾にぶつかり、閃光と怒号につれて後へ返し、悲鳴とともに遠のき消える。それはちやうど、老いたる哥薩克の母親が、わが子を軍営に見送りつつ、悲嘆の涙に沈む様にも似てゐる。――放恣で大胆な若者は黒馬《あを》に跨がり、腰に手を当てて、横かぶりにした帽子も勇ましく、駒を進めるのであるが、母は泣き泣きその後を慕つて、息子の鐙を掴み、馬銜に捉まり、取り縋つて、熱い涙を降りそそぐ。
吠え狂ふ怒濤の間に間に、突堤の上に焼け残つた木株や石が異様に黒ずんで見えてゐる。そして一艘の小舟がもやはうとして、上下に揺れながら、ゴツンゴツンと岸にぶつかつてゐる。このやうに、ドニェープルが狂ひ立つてゐるさなかに、独木舟などを浮かべて漕ぎ出した、向ふ見ずの哥薩克はいつたい誰だらう? てつきりそいつは、ドニェープルが蠅でも呑むやうに人間を鵜呑にすることを知らぬのだらう。
やうやく小舟が繋がれると、その中から魔法使が立ち現はれた。彼は不機嫌さうな面持をしてゐる。彼は、哥薩克たちが、亡き主ダ
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