カテリーナは身もだえして泣き悲しんだ。その時、遥か彼方から土煙を蹴立てて、老大尉ゴロベーツィが救援のために駒を乗りつけた。
十
天気の和やかな折、自由になだらかに、森と山とのあひだを洋々として流れを運ぶドニェープルは実に素晴らしい。漣も立たねば、水音も聞えぬ。一と目見ただけでは、その雄大な広い流れは動いてゐるのか静止してゐるのか見分けがつかず、全体があたかも水晶の如く、又さながら碧い鏡の道の如く、緑なす下界を貫き、無量の広さと無限の長さに、うねうねと延び拡がつてゐる。さういふ時には、灼ける太陽も心地よげに中天から光芒の足をその冷たい水晶のやうな水に浸し、水際の森も楽しげに鮮やかな影像を水に落す。緑の巻毛をもつ森! それは野花と共に水面ちかく群がつて、身をこごめながら水中を覗きこみ、飽かずおのが朗らかな眸にながめ入り、ほほ笑みかけ、枝を頷かせては会釈する。しかし、彼等にはドニェープルの中流を見ることは出来ない。太陽と碧空の外には、そこを眺め得るものがない。ドニェープルの中流までは飛んで行く鳥も稀れだ。壮麗なること! 世界ひろしといへどもこの河に匹敵する河はまたとない。暖
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