お起ちなさい、手を伸ばして下さい! 起きて下さい! せめて、もう一度あなたのカテリーナを御覧になつて下さい。ただ一言でもその唇を動かして物を仰つしやつて下さい!……でも、あなたは何にも仰つしやいませんわ、何にも、あたしの、さつぱりした旦那様! あなたのお顔はまるで黒海のやうに蒼白《あをざ》めてしまひ、あなたの心臓はぴつたり止まつてしまひましたわ! まあ、何だつてあなたはこんなに冷たいのです? あたしの熱い涙もあなたを温めることが出来ないのでせうか? どんなに大声でお呼びしても、あなたを呼び醒すことは出来ないのでせうか? これからは誰が、あなたの軍隊を率ゐてゆくでせう? 誰があなたの黒馬《あを》に跨がつて、大声叱呼しながら、哥薩克の陣頭に劔を振ふでせう? おお、哥薩克! お前たちの名誉と栄光は何処にあるのです? お前たちの名誉と栄光とは、今はもう両眼を閉ぢて冷たい土の上に横たはつてしまつた。あたしを埋めてお呉れ、この人といつしよに埋めてお呉れ! あたしの顔へ土を撒きかけてお呉れ! あたしの白い胸の上に、楓の十字架を立ててお呉れ! あたしには、今はもう美しさも要らなくなつてしまつた!」
 
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