んだもの。」
※[#始め二重括弧、1−2−54]あれはカテリーナの霊魂なんだな。※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、ダニーロは思つた。しかし、それでもまだ、身動きひとつすることも出来なかつた。
「懺悔をなさいまし、お父さん! お父さんが人を殺すたんびに、死人が墓の中から立ち上るのを、怖ろしいとは思はないのですか?」
「またしても古いことを!」と、荒々しく魔法使が遮ぎつた。「俺はどこまでも、一旦かうと思ひたつたとほり、お前にさせずには措かんのぢや。今にカテリーナは、この俺を恋するやうになる!……」
「おお、お前は妖怪《ばけもの》だ、わたしのお父さんではない!」と、彼女は呻くやうに叫んだ。「いいえ、お前の思ひどほりになんぞなるものか。なるほど、お前は妖術の力で魂を呼び出して彼女《あのひと》を苦しめるけれど、神様だけが彼女《あのひと》を御意《みこころ》のままになし給ふことが出来るのです。いいえ、カテリーナの躯《からだ》にわたしが宿るかぎり、そんな神意に背いた破倫を犯させはしません。お父さん! 最後の審判の日は近づきましたよ! たとへあなたがわたしのお父さんでなくつても、わたしに、愛する真
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