ちあゐねえよ。」と、教父《クーム》が言つた。「あいつのゐるとこへ、のめのめと帰えつて堪るもんけえ。おほかた夜明けまで婆あ仲間とほつつき※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つてやがるだらうよ。」
「誰だい?」と、表口へ二人の仲間同士が袋を担ぎこんだ物音を聞いて、教父の女房が家の中から戸を開けて呶鳴つた。
教父《クーム》は立ちすくんでしまつた。
「そうら見なせえ!」と、がつかりして織匠《はたや》が呟やいた。
教父《クーム》の女房は世間によくある型のかみさんだつた。亭主とおなじやうに、彼女も殆んど家にはゐないで、まるで日がないちんち中、おしやべり仲間や金持の老婆の家へ入りびたつて、おべんちやらを並べながら、ガツガツと物を食つてゐたが、朝の間だけは亭主とよく啀《いが》みあひをやつた、といふのは、朝だけは教父《クーム》と顔をあはせることが間々あつたからで。彼等の家は郡書記のはいてゐる寛袴《シャロワールイ》の二倍も古びてゐた。屋根にはところどころ藁も無い処があつた。籬はといへば、きまつて誰も彼もが外へ出るとき、犬除《いぬよ》けの杖を持つて出ずに、教父《クーム》の家の菜園を通りすがりに手頃
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