弧、1−2−55]さう思ひながら、鍛冶屋は呆気に取られて、ぼんやり口を開けた。と同時に、彼の口へも肉入団子《ワレーニキ》が一つ飛んで来て、ハッと思ふ間に口端ぢゆうを凝乳《スメターナ》だらけにした。鍛冶屋は肉入団子《ワレーニキ》を払ひ落して口を押し拭ひながら、世にも不思議なことがあるものだ、悪霊といふものは何処まで人間を悧巧にするのだらうと深く感歎して、それにつけても今自分に助力を与へ得る者は、パツュークを措いて他にはないと確く信じた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]もう一度頭を下げて、詳しく教へて呉れるやうに頼んでみようか……。それにしても、なんといふ罰あたりだらう! 今夜は精進の蜜飯《クチャ》だといふのに、このひとは肉入団子《ワレーニキ》を、こんな腥《なまぐさ》い肉入団子《ワレーニキ》を食つてゐる! ほんとにおれとしたことが、なんといふ馬鹿だらう、こんな処にゐるだけでも、罪障を重ねるといふものだ! さうだ、もう帰らう!……※[#終わり二重括弧、1−2−55]そこで、信心深い鍛冶屋は、一目散にその家から逃げ出した。
しかし、袋の中で、前もつて有頂天になつてゐた悪魔には、こんな素晴
前へ
次へ
全120ページ中66ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平井 肇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング