も消えて亡くなれ! おれは氷の穴から身投げをしておつ死《ち》んでしまはう!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
そして決然たる歩調《あしどり》で娘たちの群れに追ひつくと、彼はオクサーナと肩をならべて、きつぱりした口調で言つた。「左様なら、オクサーナ! 誰でもすきな花聟を見つけるがいいよ、そしてすきな男をからかふがいいさ。しかし、もうおれはこの世ではお目にかからねえよ。」
美女はびつくりしたらしく、何か言はうとしたが、鍛冶屋は手を一つ振るなり、駈け出してしまつた。
「おうい、何処へ行くんだい、ワクーラ?」若者たちは駈けてゆく鍛冶屋の後ろから呼んだ。
「左様なら、みんな!」と、鍛冶屋はそれに答へて叫んだ。「神の思召しで、又あの世ではお目にかかるかも知れねえが、もうこの世ではいつしよに遊べないよ。左様なら! これまでのことは悪く思はないで呉れ! コンドゥラート神父にさう言つて、おれの罪障の深い魂の追善をして貰つて呉れないか。それからおれはつい俗事にかまけて上帝や聖母の御像へ上げる蝋燭の彩色《いろつけ》をたうとうしおほせなかつたつて、断わつてくれ。そしておれの長持の中にある物はみんなお寺へ
前へ
次へ
全120ページ中57ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平井 肇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング