たでねえか。」
 村ぢゆうに誰ひとり憚る者もなく、五哥銅貨や蹄鉄をまるで蕎麦煎餅かなんぞのやうに片手で捩ぢ曲げることも出来る、この鍛冶屋が、現在自分の足もとに平伏してゐる様を眺めて、チューブは内心ひそかに満悦でない筈はなかつた。それでも、これ以上、自分の威厳を墜すまいとして、チューブは鞭を取りあげると、ワクーラの背中を三つ殴つた。「さあ、もう沢山ぢや、起つがええ! 何時も老人《としより》のいふことはよく聴けよ! おらとお主《ぬし》の仲のことあ、きれいさつぱり水に流さう。そこで今度は、お主の望みの筋を聴かうでねえか。」
「おとつつあん、おらの嫁《よめ》にオクサーナを貰ひてえだよ!」
 チューブはやや心に思案しながら、帽子と帯とを打ち眺めた。帽子は素晴らしい品で、帯もやはりそれに劣らぬ代物だつた。彼は肚の中にソローハの不実を思ひ浮かべながら、きつぱりとして言つた。「善えだとも! 仲人をよこしな!」
「あら!」と、閾を跨ぎながら、鍛冶屋の姿を見つけたオクサーナは、思はず叫び声をもらして、驚ろきと歓びに両の眼を瞠つたまま立ちすくんでしまつた。
「さあ見てくれ、どんな靴をおれが持つて来たか!」と
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