なされませぬやうに、何卒御赦免の程をお願ひいたしまする! 誠に恐れ多い限りでござりまするが、陛下の御足《おみあし》に穿かせられました、その御靴はそもそも何によつて製せられたものでござりまするか? つらつら考へまするに、世界広しといへども、これだけの仕事の出来る靴屋は他には一人もござりますまい。ほんにまあ、このやうな靴をば宿の妻に穿かせることが出来ましたなら!」
 女帝はにつこりとほほゑまれた。廷臣たちも同じくほほ笑んだ。ポチョームキンは苦い顔をすると共に、にやりとした。ザポロージェ人たちは、鍛冶屋が気でも狂つたのではないかと思つて、彼の腕を小突きはじめた。
「お起ち!」と、やさしく女帝が言はれた。「それ程に汝《そち》がこのやうな靴を望むのならば、その望みを叶へてつかはすに造作はない。これよ、直ぐさまこの者に最も高価な、金絲の刺繍をした靴をば一足持つて来てつかはせ! ほんとに妾には、この純朴さが気に入りました! 喃、これ、」と女帝は、他の廷臣たちより少し離れて立つてゐた、*でつぷりして、すこし蒼白めた顔の人物に眼を注ぎながら、言葉をつづけられた。その人物は、身にまとつた真珠の釦のついた質
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