、おれだつてそいつあ少し變だと思ふぞ。なんの、チェプロフなんぞにさう易々あの方を首つたけにさせることが出來て堪るもんか。ええと、それから――
[#ここから2字下げ]
『こんな侍從武官がお氣に召すくらゐなら、いつそ旦那さまのお書齋に坐つてゐる、あのへつぽこ官吏だつてお氣に召していい筈だと思ふわ。まあ、そのへつぽこ役人といつたらさ 〔ma《マ》 che`re《シェール》〕(いとしいかた)、そりやあ甚《ひど》い醜男《ぶをとこ》なの! まるで龜《かめのこ》が袋をかぶつたみたい……。』
[#ここで字下げ終わり]
一體そのへつぽこ役人てえなあ誰のことかな?
[#ここから2字下げ]
『それが苗字からして變なのよ。いつもお書齋に坐つて、鵞筆《ペン》ばかり削つてるの。髮の毛がまるで乾草みたいだわ。旦那さまに時々、下男がはりに走り使ひをさせられたりしてゐるの……。』
[#ここで字下げ終わり]
おやおや、この忌々しい狆ころめが、どうやらおれのことを當てこすつてやがるのだな。何でまた、おれの髮の毛を乾草みたいだなんて吐かすのだらう?
[#ここから2字下げ]
『ソフィーさまはこの人の顏を見るとどうしても噴き
前へ
次へ
全57ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング