気に一同を説き伏せにかかった。そうこうするうちに役人の一人で、副課長を勤めているほどの人物ではあるが、多分、おれはけっして傲慢な人間ではない、それどころか目下《めした》の者とさえ交際しているのだということを示すためであろうが、こんなことを言い出した。「まあ、いいさ、それじゃあ僕が一つアカーキイ・アカーキエウィッチに代って夜会を催すことにするから、どうか今晩、お茶を飲みにやって来て下さい。ちょうどお誂えむきに、今日は僕の命名日《なづけび》でもあるしするから。」言うまでもなく、役人たちは即座に課長補佐に祝辞を述べて、大喜びでその申し出を受け入れた。アカーキイ・アカーキエウィッチは辞退しようとしたが、一同が、それはかえって無作法だの、いやまったく恥だの、不面目だのと言い出したので、もうどうにも断わるに断わりきれなくなってしまった。とはいえ、お蔭で晩にも新しい外套を着て出られるのだと思うと、今度はまたいい気持にもなってきた。この日一日というものは、まるでアカーキイ・アカーキエウィッチにとってはもっとも盛大なお祭りのようであった。こよなく幸福な気分で家へ帰ると、彼は外套を脱いで、もう一度ほれぼれ
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