とこへ出かけたほうがよさそうだ。そうすれば、前日の土曜のあくる日だから、先生、眼をどろんとして寝ぼけ面をしているだろう。そこでやっこさん、迎え酒がやりたくってやりたくってたまらないのだが、女房が金を渡さぬ。そんな時に、おれが十カペイカ銀貨の一つも、その、掴ませようものなら――それこそやっこさんずっとおとなしくなるにきまっている。そうなれば外套もその……】こんなふうにアカーキイ・アカーキエウィッチは胸に問い肚に答えて、われとわが心を引き立てて、つぎの日曜日まで辛抱したが、ちょうどその日になって、ペトローヴィッチの女房がどこかへ出かけるのを遠くから見すますと、彼はまっすぐにペトローヴィッチのところへ出かけていった。土曜日のあくる日のこととて、はたしてペトローヴィッチはひどくどろんとした眼つきで、首をぐったり下へ垂れて、すっかり寝ぼけ面をしていた。そのくせ用むきの次第をそれと知るやいなや、まるで悪魔に小突かれでもしたように、「駄目でがすよ。」と言った。「ひとつ新しいのを作らせていただくんですなあ。」アカーキイ・アカーキエウィッチは、そこですかさず彼の手へ十カペイカ銀貨を一つ掴ませた。「旦那、
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