くらゐ。御承知の通りその頃といへば、*バトゥーリンぢゆうから読み書きの出来る手合をすつかり狩り集めて来たところで、帽子でと言ひたいところだが、なんの、片手で残らず掬ひとつてしまふことが出来たくらゐなんでな。それだから、祖父に出あふと誰彼の別なく慇懃に挨拶をしたのも至極尤もな話ぢやて。
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阿房《ドゥールニャ》 『馬鹿《ドゥラチキー》』ともいふ、骨牌戯の一種。
バトゥーリン チェルニゴフ県コノトープ郡下の小都会で、往時、総帥《ゲトマン》の居住したところ。
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さて或る時のこと、*大総帥《ゲトマン》が何事か国書をもつて女帝の闕下へ奏上しようと思ひ立つたのぢや。そこで当時の聯隊書記で――さあ困つたぞ、なんとかいふ名前ぢやつたて……※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]スクリャークでもなし、モトゥーゾチカでもなし、ゴロプツェクでもなし……なんでも、そのしちむつかしい名前は、はなから変てこな音ではじまつてゐたことだけは知つてをるが――その聯隊書記が祖父を呼びつけて、大総帥から女帝陛下への国書捧呈の使者として、彼が任命されたことを伝達
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