[#始め二重括弧、1−2−54]どうも仕方がない、徒歩で出かけることにしよう。ひよつと途中で定期市《ヤールマルカ》がへりの博労にでも出会つたら、また、なんとかして馬を買ふことぢや。※[#終わり二重括弧、1−2−55]で、彼は帽子をかぶらうとしたが、その帽子が見当らぬ。考へて見ると、昨日あのザポロージェ人と、ちよつと帽子の取り換へつこをしたままになつてゐたのだ。祖父は、ぢだんだ踏んで口惜しがつた。何から何まで悪魔の手にしてやられてしまつたのだ! ほいほい大総帥《ゲトマン》からの恩賞も水の泡だ! 女帝への上書が飛んでもないものの手に渡つてしまつたのだ! ここで祖父はくそみそに悪魔を罵つたから、さぞかし、悪魔の奴、地獄で何度も嚔《くさ》めをしたことだらう。だが、いくら悪態をついてみたところで今更なんの役に立つ筈もなく、祖父が何べん項《うなじ》を掻いても好い分別は浮かばなかつた。はて、どうしたものだらう? そこで結局、他人の智慧を借りることにした。ちやうどそのとき酒場にゐあはせた、堅気な人たちや、馬車ひきや、ちよつと立ち寄つただけの客などを集めて、かくかくの次第でまことに困つたことが出来《しゆ
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